有名な脚本術の指南本、
「SAVE THE CATの法則~~本当に売れるための脚本術」

より、
著者のブレイク・スナイダー氏が提唱している
「10のストーリージャンル」
をご紹介します。
ストーリー(物語)を見る時に、
■この作品はどのジャンルに該当するのか
■そのジャンルには過去にどんな作品があるのか、
■そのジャンルのストーリーが出てきた時に、
どこら辺を見どころにするといいのか、
などといった視点・視座を持っておくと、
映画や小説、ドラマ、漫画などで、
このジャンルのストーリーが出てきた時に、
より興味深く味わえるようになります。
ストーリージャンル①「家の中のモンスター」
「家」というのは、
「逃げ場のない空間」
を意味しています。
海岸沿いの町、宇宙船の中、恐竜の走り回る未来のディズニーランド、家庭など
ということです。
そこで「犯罪」が起き、
その原因のたいていは、
「人間のどん欲さ(金銭欲や物欲など)」
であり、
その結果、「モンスター」が生まれます。
モンスターは罪を犯した人に復習しようとして、
罪に気づいた人間は多めに見ます。
それ以外の人間は、
「とにかく、走って逃げ、隠れる」
ということです。
「家の中のモンスター」ジャンルの見どころ
ストーリー(物語)を視る観点からは、
このモンスターにどんな新鮮味やひねりが加わっていて、
「あっ!」
となるものであるか。
これこそ脚本家の腕の見せ所であり、
視聴者側から言えばまさにそこが見どころと言えます。
「家の中のモンスター」の2つの構成要素と特徴
このジャンルには、
2つの構成要素があるそうです。
1つは、「モンスター」
そしてもう1つは、「家」
(海岸沿いの町、宇宙船の中、恐竜の走り回る未来のディズニーランド、家庭など)
そしてこのジャンルの特徴として、
おそらく人類が初めて語ったのは、
このジャンルのストーリーであったと、
著者のブレイク・スナイダー氏は述べています。
逃げ場のないところに現れるモンスター、
さらにモンスターをやっつけたがっている人間が加わると、
それこそ、
「原始人にだってわかる」
ストーリーになる、
ということです。
誰にでも理解できる
原始的で根本的な話ということですね。
考えてみれば、
原始人はそれこそ大自然の中で、
いつ猛獣に襲われて食べられてしまうか、
そんな環境の中にずっと暮らしていたわけですからね。
「家の中のモンスター」に該当する映画
この
「家の中のモンスター」
に該当する映画作品としては、
以下のようなものが挙げられています。
ジョーズ

あまりにも有名な1975年のアメリカ映画です。
平和なビーチに突如、人食い鮫が出現。
その人食い鮫と人間の死闘が描かれています。
動物パニックムービーの金字塔で、
スティーヴン・スピルバーグ監督の名を
世に知らしめた傑作です。
エイリアン

SFホラー映画の金字塔である
「エイリアン」シリーズですね。
西暦2122年、
民間の宇宙貨物船である
「ノストロモ号」
が地球へ帰還する途中、
遠く離れた惑星からのSOS信号を受信します。
科学主任のアッシュは、二等航海士のリプリーに、
その信号が解読できないことを伝えます。
そして、リプリーがなんとか信号を読み解ったところ、
なんとそれは、SOSではなく
「エイリアンからの警告」
でした。
さらに科学主任のアッシュは、
実はアンドロイドの
「裏切り者」で、
それを知った時にはもう時すでに遅し。
クルーの多くがエイリアンの餌食になってしまって・・・
という物語です。
エクソシスト

こちらはオカルト映画の金字塔と言われる作品ですね。
突然、少女に取り憑いた悪魔。
それを追い払おうと、
二人の神父が「悪魔祓い」を行います。
ですが・・・
という物語です。
オカルトブームに多大な影響を与えた作品です。
他にも、
■「ジュラシック・パーク」
■「エルム街の悪夢」
■「13日の金曜日」
■「トレマーズ」
や、憑りつかれた幽霊関係の物語も、
このジャンルに入ります。
「超自然的存在」がいなくても・・・
人食い鮫とか、エイリアンとか、悪魔とか、
そういう
「超自然的存在」
がいなくても、
この
「家の中のモンスター」
のジャンルの該当する映画もあります。
例としては、
「危険な情事」
などがそうです。

「危険な情事」は、
二人の異性が偶然出会い、
彼らの関係が徐々に複雑化していく物語です。
主人公であるダンは、
幸せな結婚生活を送っていましたが、
ある日、彼は魅力的な女性アレックスと出会います。
二人はお互いに惹かれ合い、情事が始まります。
ダンは一夜だけの遊びのつもり、
でしたが、アレックスはそれを
「運命の出会い」
と思い込み、ダンをストーキング。
そして、その魔の手は妻子にまで・・・。
この場合、アレックスが
「モンスター」
になっています。
こういうのも、
「家の中のモンスター」
に該当します。
「家の中のモンスター」まとめ
この、
「家の中のモンスター」
のジャンルが来た時は、
「モンスター」
にどんな新鮮味やひねりが加わっていて、
「あっ!」
となるものであるか。
また、
類似する作品との違いや共通点
などといったところに注目して観てみると、
より深く、ストーリー(物語)が楽しめるかと思います。
ストーリージャンル②「金の羊毛」
「金の羊毛」は、
何かを求めて旅にでるストーリー
です。
最も人気のるストーリージャンルの1つで、
このジャンルは本当によく見かけます。
「金の羊毛」
という言葉は、ギリシャ神話に由来するそうです。
英雄イアソンとアルゴ船隊員がコルキスからやっとの思いで盗み出した金の羊毛のことだ。
と、ブレイク・スナイダー氏は述べています。
つまり、
主人公は「何か」を求めて「旅に出る」。
でも、最終的に発見するのは別のもの
すなわち、
「自分自身の成長」
というストーリーです。
これはいわば、
「神話の法則(ヒーローズジャーニー)」
のテンプレートということでしょう。
神話の法則は大ヒットしている物語の多くに使われています。
これはまた後日、
記事を書きたいなと思っています。
「金の羊毛」に該当する映画
非常に有名な映画が並びます。
「オズの魔法使い」
「スター・ウォーズ」
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
などがそうです。
「千と千尋の神隠し」
や
「君の名は」
など、日本で大ヒットしている映画も、
多くがこの
「金の羊毛」
すなわち
「神話の法則(ヒーローズジャーニー)」
に該当してくるかと思います。
(挙げると本当にキリがありません)
「金の羊毛」ジャンルの見どころ
このストーリージャンルでは、
どんなに斬新なひねりを加えたとしても、
絶対に欠かせなものががります。
それは、
「主人公が旅の途中で人々と出会い、色々な経験をする」
ということです。
そしてそれら(出会いや経験)は、
一見、関連がなさそうに見えても、実は一貫性があります。
それは、
「主人公を成長させる要素」
だということです。
主人公の「成長」が「金の羊毛」のテーマとなります。
したがって、
重要なのは、
主人公が進んだ
「距離」
ではなく、
「どう変化したか」
であり、そこに見る側は、
ストーリーの前進と進歩を感じます。
このストーリージャンルでは、
物語で起こる出来事自体ではなく、
それらが主人公の成長にどう繋がっているか、
そこを見ていくと面白いです。
このジャンルのストーリーを動かすのは、
出来事自体でははく、
出来事からヒーローが何を学ぶか、
だからです。
「泥棒もの」も含まれる
ブレイク・スナイダー氏は
「泥棒もの」
もこのジャンルに含まれると解説しています。
また、
個人であれ、組織であれ、
「城のなかの秘宝探し」
のようなストーリーや、
「任務遂行のストーリー」
もこの「金の羊毛」に含まれ、
同じルールに基づく、とのことです。
最初は重要に思えた任務よりも、
最終的には個人が何かを発見することの方に、
意味があります。
ストーリーのひねりや展開よりも、
そこから生まれた発見や変化の方が重要、
ということです。
ストーリージャンル③「魔法のランプ」
という映画があります。

この中で、
「ああ、もっとお金があったら良かった!」
という主人公プレストン・ウォーターズのセリフがあります。
そしてプレストンはそう言ったあとすぐに、
願いが叶って、100万ドルを手にし、
嬉しさのあまり動揺します。
また、

という映画では、
パッとしない人生に限界を感じていた
主人公のブルースが、
ある日、神に呼ばれて全能の力を授かります。
こういった感じの
「~があったらいいのに」
「~だったらいいのに」
というのは多くの人間が抱える、
ある意味で根源的な欲求です。
だからこの手のストーリーは、
テレビドラマなどでもよく見かけますし、
しかもヒットすることが多いです。
この
「~があったらいいのに」
「~だったらいいのに」
が実現してしまうジャンルの映画を、
ブレイク・スナイダー氏は
「魔法のランプ」
というジャンルとして位置付けています。
「魔法のランプ」は別に魔法である必要はない
「魔法のランプ」というと、
ご主人様の願いを叶えるためにランプから出てくる
「魔人」
を思い浮かべるかもしれませんが、
特に魔法である必要はありません。
神さまのおかげだろうと、
単なる運の良さであろうと、
魔法使いのおかげであろうと、
「願望がいきなり叶ってしまう」
というところがこのジャンルのポイントになっています。
ストーリーとして重要なのは、
主人公が素敵な人物で、夢が叶う価値のある人物
であることです。
そして願いが叶い、人生が変わっていく様子に、
見ている側は感情移入して物語に巻き込まれていきます。
「魔法のランプ」の「B面」
この「魔法のランプ」ですが、
「願いが叶う代わりに、呪いも叶う(天罰がくだる)」
という「B面」のバージョンがあります。
ライアーライアーという映画では、

ウソばかりつく弁護士の父親
(主演のジム・キャリー)
に嫌気がさした息子が、
「二度とお父さんがウソをつけませんように」
と願います。
すると奇跡が起こってしまい、
お父さんは本当にウソをつけなくなってしまいます。
しかし、得意なウソのおかげで今まで成功してきたのに、
そのウソがつけなくなってしまう・・・。
しかもこの日は大事な裁判が・・・。
この窮地を切り抜けるために、
ジムは変わらざるを得なくなります。
そして、自ら変わったことで、
ジムは本当に一番欲しかったもの、
すなわち、
「妻と子供からの尊敬」
を手に入れる、という物語です。
「魔法のランプ」のジャンルに該当する映画
その他、「魔法のランプ」ジャンルに該当する映画としては、
■「マスク」
■「ラブ・ポーションNo.9」
■「フラバー」
■「フリーキー・フライデー」
■「恋はデ・ジャブ」
など、非常にたくさんあります。
「魔法のランプ」ジャンルの基本ルール(1)
まず、
「主人公はシンデレラのようにひどい扱いを受けている」
ことが多いということ。
だからこそ、主人公の願いが叶い、
幸せになってくれることをみんなが願うわけです。
しかし、どんなに哀れで同情できる主人公であっても、
「成功しすぎると鼻について」
きます。
そして主人公は最終的に、
「魔法よりも普通の人間(視聴者と同じ人間)でいるのが一番だ」
と気づくようになる、という流れです。
最終的には、
「そもそも現実に魔法なんてないのだから、一番大切なのは、道徳に適った行いをすることだ」
という教訓が用意されます。
「魔法のランプ」ジャンルの基本ルール(2)
反対に、
「天罰が下るバージョン」
では、設定は逆になります。
「主人公は一度、懲らしめた方がいい奴」
ですが、
「最後には多少の救いが必要」
となります。
よくできた作品では、
たとえ嫌な奴であっても、
救ってやる価値が多少はあることが最初に示されます。
そしてどちらのパターンでも、
基本的なルールとしては、
主人公は魔法に(もしくは呪いに)かかり、
最終的に勝利を収めます。
これが、「魔法のランプ」ジャンルの特徴です。
ストーリージャンル④「難題に直面した平凡な奴」
このジャンルは、
「どこにでもいそうな奴が、とんでもない状況に巻き込まれる」
というのが基本的な定義です。
これは観客が、
「自分にも起こりうる」
と思うストーリーの1つです。
観客は、ほとんどが
「自分は普通の人間」
と思っているでしょう。
だから、
同じように普通の人間である
主人公がそんな状況に追い込まれると、
ついつい同情して、物語に惹きこまれていく、
という構図になっているのかと思います。
「何でもないある日」
がいきなり、
「とんでもない1日」
になってしまうのですから。
「難題に直面した平凡な奴」に該当する映画
有名映画で言うと、
「タイタニック」
なんかもそうだそうです。
自分の乗っている客船が氷山にぶつかって沈み始めるが、
救命ボートの数が足りない・・・。
「ダイ・ハード」
でも、妻の勤める会社が、
ポニーテール頭のテロリストに
ビルごと乗っ取られます。
「ターミネーター」
では、未来からやって来たロボットが、
「お前と息子を殺しに来た」
と言います。
どれもが、普通の人がとんでもない難題に巻き込まれます
「難題に直面した平凡な奴」の基本ルール
1つは、
主人公が観客と同じ普通の人間だということ
です。
そしてもう1つは、
そんな普通の人間が勇気を振り絞って、
解決しなければならないことに直面した、
ということです。
この2つの要素が組み合わされることで、
ミスマッチな状況が生まれ、
しかも主人公が平凡であればあるほど、
問題は大きく見えてきます。
そして、このジャンルに欠かせないのが、
「大問題」と「悪い奴」
です。
悪者が悪ければ悪いほど、
主人公の行動は素晴らしく、
勇気あるものに見えます。
だからこのジャンルの作品が来たときは、
「徹底的に悪い奴が出ているかどうか。」
を見てみると良いかと思います。
悪ければ悪いほど、
ストーリーとしての完成度が高く、
面白い物語となっていることに気づくかと思います。
ストーリージャンル⑤「人生の節目」
■思春期のあの頃。あんなに大好きだった女の子は、自分の存在にすら気付いていなかった・・・
■40歳の誕生日にいきなり離婚してと切り出された・・・。
誰もがこのような辛い思い出には共感します。
人間誰だって、
人生の節目に何かしら辛い経験をしているからです。
節目だけに、印象もことさら強烈です。
だからこそ、ストーリージャンル
「人生の節目」
は人間らしいストーリーであり、
観客の心を揺り動かし、
時には大笑いさせるストーリーとなります。
「人生の節目」ジャンルのルール
シリアスなドラマであれ、
コメディーであれ、
「人生の節目」
ジャンルのストーリーは基本的に同じルールがあります。
それは
「変化」
が描かれていることです。
ストーリーは基本的に「変化」ですが、
「人生の節目」
ジャンルにおける
主人公が直面するつらく苦しい経験は、
「人生という名の力」
によることが多い、
ということです。
どんなにベストな選択をしていても、
人生は目に見えないですし、
理解しがたい困難が襲ってくることがあります。
そして、
その辛いところを潜り抜けて初めて、
主人公は解決策を見出す、
ということです。
要するに、
「人生の節目」ジャンルのストーリーでは、
コメディーであれば、シリアスなドラマであれ、
モンスターが主人公に忍び寄り、
主人公はその正体に徐々に気付き、
(自分の力を上回る強烈な力=人生というもの)
受け入れることによって、
最後に勝利を収める、
という形です。
「人生の節目」に該当する映画

主人公のアリスが、
仕事や育児で悩もものの、
仕事で家を空ける事が多いマイケルに相談できず
いつしかアルコール依存症に陥る物語です。
このように、
アルコールや依存症に直面する話、
また、思春期、中年の危機、老い、失恋のストーリーや、
愛する者の死を乗り越える話、
などが
「人生の節目」
に該当するようです。
要するに、
「どうしようもないほど大きな人生という名の試練」
が「人生の節目」に該当するのかと思います。
そして、主人公は段階を踏みながら、
コントロールできない不可解な力を受けれていき、
最後に笑えるようになった時に、
勝利が訪れる、
そんなストーリージャンルが
「人生の節目」
になります。
最後に・・・
「SAVE THE CATの法則~~本当に売れるための脚本術」

のストーリーの10ジャンル、
今回は5つをご紹介させていただきましたが、
これは脚本家を目指す人のための指南本です。
でも、脚本家を目指さない人でも、
こういう本を読んでおくと、
よりストーリー(物語)が様々な角度から深く楽しめて、
より映画・ドラマ・小説・漫画などを見るのが楽しくなります。
ぜひ
「脚本家を目指しているわけではない方」
もご一読されることをおすすめいたします。
本当に、人生が豊かになりますよ^^
ということで、ここまでお読みいただきありがとうございました!
佐藤洋介