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主人公:もうすぐ定年退職を迎える会社員の夫・ヒトシ(65歳)
【7年前】
ヒトシは、会社の窓から見える空を眺めながら、7年後に迎える定年退職に思いを馳せていました。
現在、58歳のヒトシ。彼にとって、定年退職は単なる節目ではなく、長年連れ添った妻、エツコへの感謝の気持ちを形にする絶好の機会でした。
「エツコはいつも黙って支えてくれた。少しでもその思いに応えたい」
ヒトシは心の中でつぶやきました。
彼女は、家庭を守り、子育てに奮闘し、彼の仕事を支え続けてくれました。
ヒトシは定年退職の日に、エツコにサプライズプレゼントを渡すことを決めていました。
何を渡すかはもう決めていました。エツコが以前、テレビで見て目を輝かせた「日本一周・豪華客船の旅」のチケットでした。
その日、ヒトシはいつものように小さな貯金箱に小銭を入れました。
彼にとって、この習慣はただの節約以上の意味がありました。
決して多くはない自分のお小遣いで「日本一周・豪華客船の旅」のチケットを買うために、数年にわたり、彼はこの小さな箱に希望を詰め込んでいたのでした。
それは、妻への深い愛と感謝の証でした。
【定年退職半年前】
時が経ち、ヒトシの定年退職の日は半年後に迫っていました。
しかし、ここで計画に思わぬ障壁が立ちはだかります。
ある日、彼がついにチケットを買おうとして、会社の昼食時にスマートフォンで豪華客船の旅の価格を確認すると、予想以上に高騰していました。
外国人観光客の増加によるインバウンド需要の回復が原因でした。
今までコツコツと貯めてきた手持ちの貯金だけでは、とうてい足りないことが明らかになりました。
深い落胆とともに、ヒトシは会社の自分のデスクに戻りました。
「残された時間で、どうにかしてその差額を埋める方法はないものか・・・」
彼は必死に考えました。そして、ある決意を固めます。
「どんな仕事でもいい。エツコへの感謝を形にするためなら、なんだってやるさ」
そうして、ヒトシの新たな挑戦が始まりました。
退職を前にして、彼は人生で初めての副業に踏み出しました。
もう65歳を迎えるヒトシを雇ってくれるアルバイトはあまりありませんでしたが、それでも何とか見つかったのが、清掃スタッフ、警備員としてのアルバイトでした。
日が落ちて、オフィスの灯りが一つずつ消えていく中、ヒトシの新たな日常が始まりました。
会社の同僚たちが帰宅する時間、ヒトシは別の職場へと向かいました。
彼はスーツを脱ぎ捨て、ある時は清掃員の制服、ある時は警備員の制服に袖を通しました。
「こんな歳になって新しいことを始めるなんてね」
と、ヒトシは自嘲気味に笑いました。
しかし、その笑顔の裏には、妻への強い決意がありました。
彼はモップを手に、廊下を往復し、オフィスビルの隅々までピカピカに磨き上げました。
警備員としての夜勤もまた、新たな挑戦でした。
会社の仕事を終えた後の夜間の立ち仕事は65歳の体には堪えましたが、エツコの笑顔を思い浮かべながら、彼は耐え抜きました。
妻への感謝と愛情を糧に、一歩一歩前に進んでいきました。
それでも、時には疲れが上回ることも度々ありました。
ある晩、ふとした瞬間にバランスを崩し、床に転んでしまうこともありました。
痛みと共に、
「こんなことで、本当にエツコの夢を叶えることができるのだろうか」
という不安が彼を襲いました。
しかし、そのたびに、エツコとの日々、共に過ごしてきた時間、彼女が見せてくれた無数の優しさが、ヒトシの心を支えました。
【定年退職の日】
そして、遂にその日がやってきました。ヒトシの定年退職の日です。
彼は、これまでの苦労をすべて乗り越え、ついに妻にサプライズプレゼントを渡すその瞬間を迎える
・・・はずでした。
アルバイトを始めてから数ヶ月、彼が稼いだ金額を貯金箱から数えてみると、残念ながら目標額には届いていなかったのです。
ヒトシの計画は崩れてしまい、定年退職の日に、妻の長年の夢であった「日本一周、豪華客船の旅」のサプライズプレゼントができないという、
あまりにも辛い結末となってしまいました。
退職金は出ましたが、それは老後の備えに取っておかなければなりません。
ヒトシはなすすべがないまま定年の日を迎えました。
本来であれば長年の務めを終えた晴れの日にもかかわらず、無力感と失望感に打ちひしがれ、深く肩を落としながら帰宅しました。
自宅に到着すると、エツコが温かく迎えてくれました。
「長い間のお勤め、本当にご苦労様でしたね」
という言葉と、たくさんの手料理でヒトシをもてなしてくれました。
ヒトシは思わず、こみ上げるものをこらえきれなくなってしまいました。
「あなた、これからはゆっくりしてね」
エツコはヒトシを気遣い、優しい言葉をかけてくれました。
そうしてしばらく2人で食卓を囲んでいると、エツコがヒトシにサプライズを明かしました。
実は、彼女も夫への感謝の気持ちを込めて、内緒でお金を貯めていたことを告げたのです。
「生活費を少しずつ貯めていて。あと、実はスーパーでのパートも何ヶ月かやったのよ。もう60過ぎた私には酷だったわ。ウフフ」
そしてエツコは、
「たいした金額じゃないけど、これで温泉旅行にでも行く?」
と言いました。
ヒトシは心の底から驚き、実は自分も長年、お小遣いを貯金していたことを告げました。
清掃と警備のアルバイトをやっていたことも。
「君が昔、いつか行ってみたいと言っていた『日本一周、豪華客船の旅』を定年退職の日に、サプライズプレゼントしたいとずっと考えていて・・・。でも、アルバイトをしても、あと少し届かなかった・・・。」
「あなた、それで毎晩、帰りが遅かったのね・・・。本当にありがとう」
今度は、エツコも流れ出るものをこらえきれなくなりました。
そしてヒトシは、お互い予期していなかった「夫婦での共同貯金」の金額を合わせると、エツコが夢に見ていた豪華客船の旅に行けることが分かりました。
ヒトシは妻に深く感謝し、
「でも、君も貯金をしていてくれたおかげで、二人の貯金を合わせると、十分に行ける金額になるよ。日本一周・豪華客船の旅、一緒に行かないか」
と提案しました。
エツコはとても喜び、瞳から流れ出るものがずっと輝いていました。
【数か月後】
ついに二人は、豪華客船で日本一周の旅に出かけました。
船は美しい日本の海岸線に沿って進み、各寄港地での上陸はまるで新しい世界への扉を開くかのようでした。
夫婦は、船上での時間を満喫しました。
煌びやかなシャンデリアが輝くダイニングルームでのゴージャスな夕食、
星空の下での夜のデッキウォーク、
そしてラウンジでの生演奏に耳を傾けながら過ごすひととき。
それぞれの地で巡り合った文化や人々との出会いも、二人にとってかけがえのない思い出となりました。
海を渡る旅は、彼らにとってただの旅行ではなく、二人の関係を再確認し、お互いへの深い感謝と愛を再発見する機会となりました。
船旅の終わりには、二人は生涯忘れられない絆と思い出を共有していました。
この思い出によって、二人は愛情と思いやり、そしてお互いへの尊敬の気持ちをさらに深め、新たな人生の章を一緒に祝うことができたのでした。
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